彼氏彼女の事情

彼氏彼女
白泉社随一の重い作品です



彼氏彼女の事情

津田雅美原作の『彼氏彼女の事情』(1996年)は90年代にアニメ化もされた白泉社の人気作品の1つです。

アニメの監督はあの『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明です。そのせいか監督ならではの独特な演出が光って、後半は原作とはまた違う雰囲気を醸し出しています。

一方原作は原作で予想の斜め上をいくストーリーとなっているためいろんな意味で裏切られます。

容姿端麗で頭脳明晰な宮沢雪野が、同じく容姿端麗で頭脳明晰な有馬総一郎と恋に落ちるラブストーリーであるのですが、この少女漫画は、単純な男女の心の動きだけの描写に形を留めていません。

そもそもこの作品は前半と後半のテンションが全く違い、前半はラブコメとなっているのになぜか後半は救済系の話になっているため当時の読者からは賛否両論の意見が上がったとなったそうです。

優等生の仮面を被っていた雪野は骨の髄まで見栄っ張りであり、人に褒められることを至上の喜びとしていました。しかし雪野以上に秀才だった有馬は何かにつけて雪野の上に行きます。

そのため目の敵にしていたのに、よりにもよってその有馬に自分の本性を知られてしまいます。

そこから何やかんやあって好きになってライバルに邪魔をされながらも付き合うラブコメパートと有馬自身のトラウマを消しさるという前半では考えられないようなシリアスパートが続きます。

周りの人間もそれぞれ闇を抱えているのですが、有馬の闇というのがとてつもなくデカく中々にヘヴィーで…

・幼少期に実父が犯罪を起こして実母は行方不明
・名家の家であったがゆえに“犯罪者の息子”と親戚中から罵詈雑言
・引き取ってくれた両親に見捨てられないように優等生を演じ続ける
・↑の経験から初恋の雪野への依存度が高い

と、かなりの病みキャラなのです。更に、有野父の登場によって明かされる有馬家に続くしがらみの連鎖があるのです。これがかなり根深く、ほとんど文学作品に近いほどの闇と言ってもいいぐらいです。

これを救うのがヒロインの雪野というのが従来の漫画のセオリーなのですが、『彼氏彼女の事情』は違います。

雪野はほとんど渦中の外の人間であり、実質救うのに一役買ったのは彼の友人の浅葉秀明です。

登場したキャラクターの中で最も有馬を理解しており、ピンチの時には駆けつけてくれるヒーロー的ポジションにいます。一時期は完全に立場が逆転してこの2人がヒロインとヒーローのようでした。

すっかりポジションを奪われたかのように思われた雪野ですが、彼女がいたからこそ有馬は新しい自分へとなれました。

最初に変わるきっかけをくれたのは誰でもない彼女自身だったからです。おそらくこの2人のどちらかが欠けてもハッピーエンドとはならなかったでしょう。

当時展開についていくことができなかった方も、20代となった今なら昔と違った意見を持てるかもしれません。是非読み返してみてください。

そんな名作を生み出した津田雅美は今も白泉社で漫画を描き続けているものの、すっかり絵柄が変わってしまったためほとんどの人が分からないかもしれません。

ですが、相変わらず面白い作品を生み出しており、個人的にはカレカノに似た『eensy-weensy モンスター』はおススメです。

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